中ア北部 大滝山(1737.6m) 2011年11月26日

所要時間 7:13 ゲート−−7:49 三級ノ滝分岐−−8:33 横川川を越える−−8:46 北西尾根−(先に進んで取付を探すがNGで戻る)−8:57 斜面に取り付く−−9:09 尾根に乗る−−10:06 大滝山 10:32−−11:07 林道−−11:54 三級ノ滝分岐−−12:28 ゲート

概要
 主稜線から外れたマイナーな山。登山道は無い。横川川沿いの林道を終点近くまで歩き、1230m付近で尾根に取り付く。林道は蛇石キャンプ場で施錠されたゲートがあり、尾根取り付きまで約6.5km歩く。林道の前半は傾斜が緩く自転車があると使える。大滝山北西尾根は急だが植林が続き藪は皆無で歩きやすい。山頂のみ薄い笹がある。北側、東側も笹があり、西尾根のみ笹が無い。山頂は樹林で展望なし。

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 中アは2000m峰は登り終わり最近ではあまり足が向いていなかったが、主稜線から離れて標高が落ちたエリアではいくつも未踏峰がある。その中で標高が高い部類が大滝山だ。ここは黒沢山からさほど遠くない位置にあるが近いわけでもなく、黒沢山は濃い笹藪に覆われており、黒沢山から稜線伝いに往復するのは残雪期以外は無理であろう。それよりも山頂北から西にかけて走る横川川沿いの林道を使ってアプローチし、適当な尾根から登るのが手っ取り早い。ただし林道はどこかでゲートが閉まっているだろうと予想し、ゲート位置調査のためネットで検索したら1件だけ大滝山の記録が出てきた。それによると蛇石キャンプ場でゲートがあるそうで、北西尾根を使ったそうだが予想外に藪が無かったらしい。ただし、この人が登ったのは4月上旬の残雪期、山頂の写真も雪が写っており、本当の植生の濃さが不明だ。また、林道は2箇所ほど膝くらいの水流があったそうで、この人はMTBだったからまだいいが、歩く場合は長靴でも水没しそうな。ただ、水量の多さは残雪期だからとも考えられ、1年間で最も水量が減る晩秋の今なら大丈夫かもしれない。

 地形図を見てもこの横川川沿いの林道を使うのが一番楽そうだし、そうなると山頂までの最短コースである西尾根を登るのは自然な選択であろう。真似させてもらうことにする。ただし車に積める自転車は無いので林道を約6.5kmテクテク歩くことになる。そして渡渉を考えてお化け長靴であるウェーダーを担ぐことにした。これで腿までの水深でも濡れることはない。まあ、使わないで済むならその方がいいが。ウェーダーは結構重く、たぶん2kgくらいあるだろう。

蛇石キャンプ場駐車場 キャンプ場入口のトチノキ
解説板

 中央道を降りて辰野から横川川沿いの県道に入り西を目指す。真っ暗なのでダムがどこにあったか気づかず、いつのまにかゲート前に到着。しっかりと施錠されていた。左手にキャンプ場駐車場へと下る道があり、下った平地に車を置いた。トイレもあっていい場所である。さすが今の時期はキャンプする人間はいない寒さで私の車だけだった。

施錠されたゲート。ここから歩く ゲートが横川坊主林道起点

 翌朝、今年一番の冷え込みで朝飯は今シーズン初めてのカップラーメンだ。さすがに冷えた弁当はもう無理な気温だった。今日は大半が林道歩きの時間で、たぶん尾根歩きの時間は2時間はかからないだろう。所要時間は半日強と予想、さほど急ぐ必要は無く周囲が充分明るくなってから出発、まだ車は私だけ。たぶん大滝山など登る登山者自体がほぼ皆無だろうな。偏頭痛の発作が現れないよう、首と頭防寒は厳重にしておく。今はダウンジャケットまで着ているが、林道歩きで体が温まればもっと軽い格好になるだろう。ゲートは施錠され、両脇はバイクがすり抜けられないようガードされており、右側に人間が通過できる隙間が設けてあった。自転車なら持ち上げて通過可能だろう。

500m毎に距離標識あり 稜線は霧氷で真っ白
造林小屋

 林道はよく使われているようで普通車でも問題なく走行できる路面状況だが、ゲートがあるのだから一般登山者は歩くしかない。6.5kmだと車なら10分程度だろうか。冷え込みで水溜りには薄い氷が張っており今シーズン初めて見た氷だった。東京だとまだ1ヶ月先か? 林道脇には500m毎に距離ポストが立っており距離把握にちょうどいい。しかしなかなかこれが進まない。こんなときのために携帯音楽デバイスの出番だけど。奥に見える稜線は霧氷で白くなっていた。地面も僅かに白い部分があり、薄っすらと降雪があるようだ。さて、アイゼンが必要なほどだろうか。いや、標高が低いからそこまでいかないだろう。

三級の滝分岐標識 三級の滝分岐。左が三級の滝方向
こちらは大滝山方向

 3kmポストの少し先で左に三級ノ滝分岐。濃い轍はそちらに吸い込まれるが直進方向の道もけして悪くはない。ここにもゲートがあるがオープンだ。ここまでの間にいくつか林道が分かれたが全て入口にはゲートが締まっていた。最初にゲートがあるのだから他はいらないような気がするのだが。

小樽沢の標識。坊主岳の文字あり 小樽沢方面の林道
小樽沢は林道上を流れている 横川川は堰堤のような橋で渡る

 さらに奥に進むと少し登り気味になってきて、自転車だと疲れそうな。電動アシスト自転車だったら使えるか。距離6km強で小樽沢が登場、ここで林道が右に分岐し、案内標識では右は「坊主岳」の文字が。え、ここから坊主岳への道があるのか? それとも作業道があるのだろうか。まあ、坊主岳は登ってしまったのでどうでもいいのだけど。直進は「大滝」の表示であるが、そういう滝があるのだろうか(地形図を見たらあった)。まさか大滝山の表示じゃんまいよなぁ。ここの小樽沢は橋がかかっているわけではなく路上を沢が流れていた。なるほど、ネットで見た記事で膝くらいまである沢というのはこれのことか。しかし今は水量はずっと少なく、通常の登山靴で足の甲まで届かず、普通に歩いても防水性のある靴では全く問題なかった。それから100mくらいで横川川を渡る橋が登場、ネットでは水が乗り越える砂防ダムの堰堤がそのまま林道になっていたが、実際は橋になっていて橋の下に2箇所ほど水抜き穴があって、今はそこから沢の水が下流に抜けている。これの処理能力を超える水流があると橋の上を水が乗り越えてしまうようで、やはり残雪期は水量がかなり多かったようだ。これでウェーダーの出番は無くなり、林道脇の立ち木裏に隠し、帰りに回収することにした。結構な無駄な重りとなってしまった。

林道は続く 北西尾根の法面。取り付けない
北西尾根を通過しても法面や急斜面が続く 坊主岳方面の稜線

 林道はうねうねとヘアピンで高度を上げ、目的の尾根を横切る箇所に出た。地形的に割りと分かりやすかったが困ったことに法面で上がれない。もう少し先で上がれそうな箇所があるだろうとたかをくくって歩いたがダメで、地形図を見るとこの先は斜面の傾斜がきつくなって取り付きがもっと苦しくなりそうで、Uターンして尾根突端を通過、その下の斜面に取り付く。斜面は自然の落葉樹林で笹や潅木は無く、適当に登れる状態だった。さて、中央アルプスでよく出てくる笹はどこまで登ると登場するだろうか。

林道を戻ってここから斜面に突入 落葉樹林で籔は無し

 最初からいい傾斜で汗をかかされ、林道途中でダウンジャケットとフリースは脱いだがここで長袖シャツも脱いでTシャツと腕カバーの毎度の姿に変身。西斜面なので日当たりは無く気温はまだ低いが、無風なのでこれでも寒くはない。地面は出ているが気温が低くて水分が凍って硬く、落ち葉で滑りやすいだけでなく登山靴底のエッジがひっかからないので、元々でこぼこがある場所や石、木の根元に足を置くようにしないと急斜面ではズルズル滑ってしまう。まあ、こんな時のために6本爪の軽アイゼンも持ってきているが、使わなくて済むならその方が楽だ。でも下りではアイゼンを使った方が楽そうかも。

微かに雪が残っている 北西尾根に乗る。ここも籔無し

 適当に斜面を上がっていると薄いながら踏跡が登場、たぶん作業道の名残だろう。藪があるわけではないのでどこでも歩ける状態で、しかも落ち葉で隠れているのでよ〜く見ないと道の存在は分からないくらいだ。この植生なので道の有無など進行速度に関係ないが、せっかくなので道を辿ってみることに。最初はジグザグに高度を上げて尾根を目指すようであったが、途中から左に巻いたままとなり、その時点で道を外れてまっすぐ登り始める。しかし上部の傾斜が急になり、尾根は右手にトラバースした方が早く乗れるので右に針路変更、植生は薄いので全く問題なく進み、最後だけちょっと潅木があったがすぐに尾根直上に飛び出した。

尾根上は植林で北斜面は自然林 笹皆無で予想外に歩きやすい植生が続く

 もしかしたら尾根上に道でもあるかと思いきや、それらしき物も目印もないが、今まで以上に植生が薄くなり、南斜面と尾根直上は植林、北斜面は自然林に分かれた。岩も目立つが大物は皆無で危険箇所は無く、通常の尾根登りの範疇だった。あとは上を目指すだけだ。一応、帰りのためにここに目印を残した。今回付けた目印はこれが唯一であった。

 尾根は急な部分とそこそこの傾斜と交互に出てくる。急な部分では凍って硬くなった地面に靴底が引っかからず滑ることが多くなり、よほどアイゼンを出そうかとも思ったが、できるだけ木や岩が多くて地面がでこぼこした箇所や、獣道のような筋がある箇所を選んで繋いでいった。おおよそ植林が続いているので人間の手が入った尾根であるが目印は全く見られなかった。この尾根を使って大滝山へと登った人はかなり少ない証拠だろう。まあ、これだけ明瞭な尾根なら目印を残す必要もないだろうけど。

 標高1500m程度からは積雪量は僅かであるが雪が連続するようになった。雪が降ってから気温が低いままらしく雪はサラサラのままで、雪が凍り付いて滑るようなことはない。そういえば今シーズンで新雪を踏んだのは10月の体育の日3連休に北鎌尾根に行って以来だ。あれから1ヵ月半も雪が無かったんだなぁ。今年は本当に雪が遅かった。11月に入ってもしばらくはアルプスに雪が無くて真っ黒だったなんて珍しい。しかしここ数日は強い冬型が続いているので北アは真っ白になっただろう。残念ながらこの尾根は終始樹林が続いて切れることはなく、周囲の展望は楽しめない。

標高1510mの平坦区間 まだ登る。まだ笹が無い
熊の足跡 シラビソが増えてくる

 標高1510mで微小ピークを越えて唯一の平坦区間登場。ここで高度計を確認すると先週から校正していないのに偶然にも1520mであった。山頂まで残り標高差約200m。相変わらず植林と階段状の傾斜の尾根が続く。雪の上には小動物の足跡の他にカモシカの蹄の跡、そしてでかい足跡は人間ではなく熊のものだろう。まあ、この山深さなら熊くらいいて当然だろう。今回も熊避けの鈴は2つ腰にぶら下げて盛大に鳴っているので安心だ。

山頂直下の獣道巻道。小動物の足跡多数 山頂へ登る

 山頂直下まで来ると再び傾斜が急になり、笹が見えてきた。ここまで笹は北側斜面にはあったが尾根上にはなく、中アとしてはちょっと珍しい展開だった。これも植林が唐松ではなく桧だからだろうか。過去の経験からすると、どうも唐松の植林に笹がつき物のような気がする。日当たり等の影響か? 急斜面を横切るように小動物の足跡が続くトラバース道が登場、右に僅かに登っているのでそちらに針路変更、しかし水平に戻ったので左に向きを変えて山頂を目指し、僅かに登って山頂到着。

大滝山山頂 大滝山三角点。左の木の根元にある
大滝山から見た穂高連峰 山頂東側。笹のお出まし

 今まで笹が無かったが山頂部分よりも先は濃くはないが一面の笹だった。北側も東側も笹で、南と西は笹がない。もし北尾根を登ってきたらどうだったであろうか。どの辺から笹が出てきたであろうか。結果的に西尾根の選択は大正解であった。山頂周囲も樹林で展望は皆無とまではいかないが非常に悪く、隙間から真っ白く見えたのは形からして槍穂のようだ。その手前の2こぶは鉢盛山と小鉢盛山だろう。こちらは木の上に僅かに降雪があるようでほんのちょっと白かった。山頂の最高点には大きなシラビソが生えており、ピンクリボンと色が抜けた赤テープの目印が2つだけ。根元には雪に覆われた三角点があった。周囲の笹の中を探さなければならないと思ったら、思いのほか簡単に見つかってよかった。

 ここまで休憩無しで歩いてきたので山頂で休憩。しかし樹林で日差しが無く寒いのにはまいった。植林が伐採されるまでこのままの状態だろう。夏に来るにはちょっとだが、10月のもう少し気温が高い時期の方が良かったかもしれない。いや、沢の水量を考えるとなんともいえないか。ここは雨の後の水量が増えたときは林道歩きに長靴が必要だろう。

 休憩を終えて下山開始。登りで滑るのはよく分かったので出発前にアイゼン装着。6本爪はちょっとい頼りないがノーアイゼンよりはずっといい。ちょっと足を置く角度に気を使うが、さすがにズルっと滑ることはほとんど無くなり快調に下る。気温が上がってきて地面も多少柔らかくなってきたような。でもアイゼンを外すのが面倒で、林道まで付けたままだった。

ここで尾根を離れる 斜面を直線的に下る
踏跡の行方を追う ここが末端だが判別不能

 登りで尾根に乗った箇所は目印に頼る必要も無く周囲の地形と風景で判別でき、小さな谷地形を直線的に下っていき、再び薄い踏跡に到着。最後はどこで林道に出るのか辿ってみたが、登りで取り付いた場所から100m程度下った場所であった。しかしそこは林道の法面の急斜面で明瞭な目印等は無く、元々の道が薄いこともあって林道から入口を判別するのは不可能だろう。まあ、この植生だから踏跡にこだわる必要は全く無いが。

林道から大滝山方面を見上げる 壊れた吊橋
こちらの吊橋は現役 やっぱ熊棚はある

 再び長い林道歩き。後半戦に突入すると三級の滝に向かう観光客であろうか、2組くらいが上がっていった。ゲートに到着し駐車場に下ると車は3台ほど増えていた。

土嚢の列のような物体が蛇石 蛇石の解説

 着替えて少々の昼寝を楽しんだ後、せっかくなので「蛇石」の見学に向かう。いったいどんな石なのだろうか。蛇のように細長くニョロニョロした縄のような石なのだろうか? 案内に従って横川川に下っていく。短距離で川岸に到着、左岸側から流れ込む沢との合流点付近に問題のそれはあった。最初は土嚢が一列に積まれているのかと思ったが、実際には自然の石であり、薄い板状の岩の断面が水面に突き出ているのであった。断面には何故か適度な間隔で短い白い部分(たぶん石英)があり、これが土嚢のように見える原因だ。どういう要因でこんな岩ができたのかは知らないが、摩訶不思議な模様である。私の第一印象のように「蛇」というより「土嚢列」に見えるのは私の感性の無さのせいか。

 

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